03-6. インバウンド顧客との絆を深める!飲食店SNSでのコミュニケーションとUGC活用の極意

「SNSで終わり」じゃない!海外からのお客様との繋がりを深め、お店のファンを増やそう

これまでの記事で、Googleマップでの表示や、Instagram・FacebookなどのSNSアカウント開設、そして魅力的で「美味しそう!」が伝わる写真・動画の撮影、さらに見つけてもらうための多言語ハッシュタグの活用方法について解説してきました。

これで、あなたの飲食店のSNSアカウントは、インバウンド観光客に見つけてもらい、興味を持ってもらうための準備が整ったと言えます。しかし、SNSでのインバウンド対策は、単に情報発信するだけで完了ではありません。

本当に重要なのは、SNSをきっかけに来店してくれたお客様との「繋がり」を深め、お店の「ファン」になってもらうことです。そして、そのファンが発信する情報、つまり**UGC (User Generated Content – お客様による投稿)**こそが、インバウンド集客における最強の武器となります。

ここでは、ITコンサルタントの視点から、飲食店がインバウンド観光客とのSNSでのコミュニケーションを円滑に行い、UGCを促進・活用するための具体的な「やり方」と、それによって成功している飲食店の事例をご紹介します。

5.具体的な「やり方」:海外からのお客様とのコミュニケーションとUGC促進・活用

SNS運用は、お店からの一方的な情報発信だけでなく、お客様との双方向のコミュニケーションがあって初めてその真価を発揮します。特にインバウンド観光客にとっては、お店とのちょっとしたやり取りが、安心感や親近感に繋がり、「また来たい」「誰かに紹介したい」という気持ちを強くします。

【やり方 1】海外からのお客様との多言語コミュニケーション術

SNS上でお客様から寄せられるコメントやメッセージは、貴重な交流の機会です。言葉の壁を恐れず、積極的にコミュニケーションを取りましょう。

  • コメントやメッセージへの丁寧な多言語返信:
    • お客様からのコメントやDM(ダイレクトメッセージ)には、できるだけ早く返信しましょう。特に営業時間に関する質問や予約に関する問い合わせなど、タイムリーな情報には迅速な対応が求められます。
    • 感謝の言葉(「Thank you for your comment!」「ご来店ありがとうございました!」)や、絵文字(😊👍✨)などを活用すると、親しみやすさが伝わります。
    • 多言語対応: 日本語でのコメントはもちろん、英語やその他の言語でのコメントやメッセージにも、可能な限りその言語で返信しましょう。流暢な外国語ができなくても大丈夫です!
      • 翻訳ツールの活用: Google翻訳やDeepLなどの翻訳ツールを積極的に使いましょう。返信したい日本語の文章を入力すれば、精度高く外国語に翻訳してくれます。ただし、固有名詞(料理名、お店の名前など)や専門用語は正しく翻訳されているか確認が必要です。
      • 簡単な定型文の準備: よく使うフレーズ(例:「ありがとうございます!」「またのご来店をお待ちしております」「ご質問がありましたらお気軽にお問い合わせください」など)を多言語でリスト化しておくと、スムーズに返信できます。
  • ストーリーズのインタラクション機能を活用:
    • Instagramのストーリーズにある「質問箱」や「アンケート」機能は、お客様とのインタラクションを深めるのに非常に有効です。
    • 「今日のランチはどちらが良いですか?(写真付き)」「日本の食文化について何か知りたいことはありますか?」など、お店や料理に関する質問を投げかけ、お客様からの反応を引き出しましょう。寄せられた質問にストーリーズで回答する際も、多言語テロップを加えるなど工夫します。
  • ポジティブ・ネガティブな反応への対応:
    • SNS上のコメントやメッセージには、肯定的なものだけでなく、残念ながら否定的な意見や改善点に関するコメントが寄せられることもあります。
    • ポジティブな反応: 感謝の気持ちを伝え、「また来てくださいね!」など次の来店に繋がる一言を添えましょう。
    • ネガティブな反応: 感情的にならず、真摯に受け止める姿勢を示すことが重要です。「貴重なご意見ありがとうございます。改善に努めます。」といった誠実な返信を多言語で行いましょう。状況によっては、DMなどで個別に対応することも検討します。

【やり方 2】UGC(お客様による投稿)を増やす・活用する

UGC、つまりお客様自身がSNSに投稿したお店の写真や動画、感想は、公式の情報よりも信頼性が高いとみなされ、他の旅行者の意思決定に大きな影響を与えます。UGCを増やすための「仕掛け」を作り、それらを効果的に活用しましょう。

  • なぜUGCは強力なのか?
    • 信頼性: 第三者(お客様)からの情報は、広告よりも信頼されやすい。
    • リアリティ: 実際のお店や料理の雰囲気が伝わる臨場感。
    • 拡散力: お客様自身のフォロワーに情報が届く。
    • コスト効率: 公式がゼロから作るより、既存のコンテンツを活用できる。
  • UGCを増やすための「仕掛け」を作る:
    • 「SNS映え」するメニューや空間を作る: 写真や動画を撮りたくなるような、見た目が美しかったり、ユニークだったりする料理やドリンク、店内の装飾(フォトスポットなど)を用意します。
    • 特定のハッシュタグの使用を推奨: お店の名前やユニークなキーワードを含んだハッシュタグ(例:#あなたの店名 #〇〇カフェラテ)を決め、店内のメニューやテーブルPOP、レジ横などに表示し、「ぜひこのハッシュタグをつけてSNSに投稿してくださいね!」とお客様に伝えます。多言語での案内も忘れずに。
    • UGC投稿キャンペーンを実施: 特定のハッシュタグをつけて投稿してくれたお客様の中から抽選で〇〇をプレゼント、といったキャンペーンを実施すると、UGCの増加を促進できます。
    • お客様への声かけ: 会計時や料理提供時などに、「お料理の写真、ぜひSNSにアップしてくださいね!」「楽しんでいただけたら、#〇〇(ハッシュタグ)をつけて投稿していただけると嬉しいです!」など、笑顔で声かけしてみましょう。
  • 見つけたUGCへの反応・活用:
    • エゴサーチ(お店の名前やハッシュタグでSNS検索すること)を定期的に行い、お客様の投稿を見つけましょう。
    • 「いいね!」や感謝のコメント: 見つけたUGCには必ず「いいね!」をつけ、感謝のコメントを多言語で送ります。「素敵なお写真をありがとうございます!」「楽しんでいただけて嬉しいです!」など。この反応が、お客様の満足度を高め、今後も投稿してもらうモチベーションになります。
    • リポスト(再投稿): お客様が投稿した写真や動画を、公式アカウントのストーリーズやフィードで紹介します。ただし、リポストする際は必ず投稿したお客様に許可を取りましょう! DMなどで丁寧に依頼し、許可が取れたものだけを使用します。リポストすることで、信頼性の高いコンテンツとして活用できるだけでなく、投稿したお客様も喜んでくれます。
    • 他のプラットフォームでの活用: SNSだけでなく、Google Business Profileの「最新情報」機能や、ウェブサイトの「お客様の声」ページなどで、許可を得たUGCを紹介するのも有効です。

これらの「コミュニケーション」と「UGC促進・活用」の「やり方」を実践することで、あなたの飲食店は、単に料理を提供する場所としてだけでなく、「海外からのお客様を歓迎し、楽しい思い出を提供できる場所」として認識され、信頼と共感を得られるようになります。これは、強力な口コミ効果を生み、持続的なインバウンド集客に繋がります。

7.成功事例:積極的なSNSコミュニケーションとUGC活用でインバウンド人気店になった飲食店(仮称)

ここでは、SNSでの積極的なコミュニケーションとUGC活用により、インバウンド客との繋がりを深め、集客に成功した飲食店の事例をご紹介します。(※具体的な企業名ではなく、取り組み内容と効果に焦点を当てて記述します。)

事例:東京・渋谷にあるカジュアルな居酒屋「渋谷izakaya 灯り」(仮称)

この居酒屋は、日本らしい雰囲気で様々な種類の料理やお酒を提供しており、外国人観光客にも入りやすいカジュアルさが特徴です。以前からInstagramとFacebookのアカウントはありましたが、一方的な情報発信が中心で、インバウンド客との接点は限定的でした。そこで、SNSをお客様とのコミュニケーションとUGC促進のツールとして積極的に活用する方針に転換しました。

取り組んだこと:

  1. 徹底した多言語コミュニケーション:
    • InstagramやFacebookのコメント、DMに寄せられる海外ユーザーからの質問(「一人でも入れますか?」「予約なしでも大丈夫?」「ベジタリアンメニューは?」など)に対し、Google翻訳や定型文を使いながら、24時間以内の返信を心がけました。絵文字や簡単な英語スラングも交え、フレンドリーなトーンを意識しました。
    • お客様がお店に関する投稿をしたら、見つけ次第すぐに「Thank you for coming! Hope to see you again!(ご来店ありがとうございました!またのお越しをお待ちしています!)」といった多言語(英語+α)でのコメントを残しました。
    • Instagramのストーリーズで「Q&Aコーナー」を定期的に実施。「日本の居酒屋について知りたいこと」や「食べてみたい日本の料理」などを問いかけ、寄せられた質問にストーリーズで多言語テロップ付きの動画で回答しました。
  2. UGCを増やす仕掛け作りと活用:
    • 外国人観光客に人気の「たこ焼き器貸し出し」「利き酒セット」といった体験メニューをSNS映えするように工夫。写真撮影を推奨しました。
    • 「#ShibuyaAkari」「#TokyoIzakaya」といった多言語ハッシュタグとQRコードをデザインしたテーブルPOPを全席に設置し、「投稿してくれたら嬉しいです!」と声かけ。
    • お客様が投稿した写真や動画を日々エゴサーチ。許可が取れたものの中から、料理が美味しそうに写っているもの、お店の楽しい雰囲気が伝わるものを選んで、公式ストーリーズやフィードでリポストしました。リポストする際も、「@〇〇様、素晴らしい投稿ありがとうございます!」と多言語で感謝を伝えました。
    • リポストした投稿をInstagramのハイライトに「Visitors’ Posts(お客様の投稿)」としてまとめ、いつでも見られるようにしました。

結果:

これらの積極的なコミュニケーションとUGC活用により、SNS上での海外ユーザーからのエンゲージメント(いいね、コメント、保存、シェア)が大幅に増加しました。特に、お客様の投稿をリポストすることで、公式アカウントの信頼性が高まり、「このお店は外国人観光客を歓迎してくれるんだ」「他の人も楽しんでいるみたいだから安心」といったポジティブなイメージが広まりました。

「#ShibuyaAkari」といったお店独自のハッシュタグをつけた投稿が増え、UGCがUGCを呼ぶ好循環が生まれました。Instagramの発見タブやハッシュタグ検索経由での新規アクセスも増加しました。

直接的な効果として、「SNSで他の旅行者の投稿を見て」「お店からのコメントが嬉しかったから」といった理由で来店するインバウンド観光客が目に見えて増加しました。リピーターや、友人を連れて再来店するお客様も増え、持続的な集客に繋がっています。

この事例から学ぶこと:

「渋谷izakaya 灯り」の事例は、SNSでのインバウンド集客において、単なる情報発信に留まらず、お客様との「コミュニケーション」を大切にすること、そしてお客様自身が発信する「UGC」を促進・活用することが、いかに強力な武器になるかを示しています。

多言語での丁寧な対応や、UGCを増やすためのちょっとした仕掛け、そして見つけたUGCへの感謝と活用は、お客様との信頼関係を築き、お店のファンを増やすための重要なステップです。そして、そのファンこそが、あなたの飲食店の魅力を世界中に広めてくれる最高の伝道師となるのです。

この記事でご紹介した「やり方」を参考に、ぜひ今日からお客様とのSNSでの繋がりを深め、UGCを活かしたインバウンド集客を実践してみてください。次に読む記事では、SNS広告の活用や、インフルエンサー連携といった、さらに一歩進んだインバウンド向けデジタルマーケティング戦略について掘り下げていく予定です。